非常識な司法試験合格法則

司法試験合格のための勉強の仕方について解説

法人格否認の法理

法人格否認の法理といえば、会社法の勉強を始めて比較的早期に勉強する事項であるし、民法など別科目でも出てくる論点なのでなじみある受験生が多いだろう。

基本的には、同法理の定義・趣旨(根拠)・要件・効果をしっかり確認しておきたい。

定義

法人格否認の法理=法人たる会社の形式的独立性を貫くと正義・公平に反する結果となる場合に、特定の事案に限って会社の独立性を否定し、会社とその社員を同一視する法理

趣旨

 社団に法人格を付与する趣旨は社団に権利主体性を認めることが有用であり、それを認めるに足りる社会的実体がある点にある。
 そうだとすれば、法人格が濫用されたり、形骸化している場合にはその限度で法人格を否認することが民法1条3項の趣旨に照らして妥当である。

要件

要件は、濫用事例の場合は、

  1. 背後者が会社を自己の意のままに道具として用い得る支配的地位にあって、会社法人格を利用しているという支配の要件
  2. 違法な目的という主観的要素(目的の要件)

形骸化事例の場合は、支配の要件に加え

  1. 業務活動混同の反復・継続
  2. 会社と社員の義務・財産の全般的・継続的混同
  3. 明確な帳簿記載・会計区分の欠如
  4. 株主総会・取締役会の不開催等、強行法的組織規定の無視

とするのが一般的だろう。

答案での書き方

法人格否認の法理が問題となる場合、直接の契約の相手方である法人に資力などがなく契約責任を追及しても実効性がないといった事例になっていると思われるので、その点を答案に示して、法人格否認の法理を適用する必要があることをしっかり述べたい。

その上で、事例の中から要件と結びつく事情をしっかり引用して評価を加えることが重要だろう。法人格否認の法理の定義・趣旨・要件・効果の基礎論証を書けない受験生はまずいないので、差がつくのは事実の引用と評価の部分である。ロープラクティスの問題3を使ってしっかり練習しておきたい。

法人格否認の法理が問題となる場合は、民法の詐害行為取消などが問題となることも多いが、各科目が明確に分かれている現行の司法試験では、詐害行為取消の要件まで詳細に検討しなければならないような問題はあまり出ないと思われる。