非常識な司法試験合格法則

司法試験合格のための勉強の仕方について解説

財産引受け(会社法28条2号)

財産引受けは頻出の分野なので、しっかり押さえている受験生も多いだろう。書き落としたら即負けになる事項である。基本的には、定義、趣旨、効果を覚えた上で、追認の可否と無効の主張権者の論点を抑えておけば十分だろう。

定義・趣旨・効果

財産引受け=発起人が第三者との間で会社の成立を条件に会社のためにある財産を譲り受ける契約

【規制の趣旨】

発起人が過大な対価の支払いを約束すれば成立後の会社の財産的基礎を損なうことになる。また、財産引受が現物出資の規制を免れるために利用されるおそれがある。

【効果】

定款に記載がなければ、契約の効果は無効である。

追認の可否

追認の可否については、事後設立の手続を踏めば可能とする有力説もあるが、判例は追認を認めていない。

論証としては、「28条が「その効力を生じない」と規定しているのは、同条2号に違反する財産引受については、発起人の権限がおよばず、会社に効果帰属する余地を与えないという趣旨である。」ということを述べて、追認を否定すればよい。

事後設立(467条1項5号)の手続により追認できるという有力説に対しては、事後設立の手続が財産引受けより緩やかであることから規制の趣旨を没却するおそれがあると批判しておけばよいだろう。

無効の主張権者

無効の主張権者の論点については、受験生は落としがちだが、最高裁判例があるのできっちり確認しておきたい。

判例は、28条2号が無効と定めるのは、広く株主・債権者等の会社の利害関係人の保護を目的とするものであるから、何人との関係においても常に無効であるとしている(最判昭和61年9月11日)。無効という効果の当然の帰結だろう(最判昭和28年12月3日)。

ただし、無効の主張を長年していなかった等の事情があれば、信義則上無効が主張できない場合もあるので注意する必要がある(最判昭和61年9月11日)。